ベトナムのゴミ問題
ベトナムに行ったことのある人の中には、用水路や川に溜ったゴミを見て驚いた人もいるだろう。街中に車やバイクの排気ガスが充満し、至る所に無分別のゴミが散乱している光景はまさに「ベトナムあるある」である。
ベトナム政府は、ゴミの分別・処理に関する啓蒙活動を1990年代から実施しているものの、いまだ国民の間には環境保護意識が十分浸透しておらず、ゴミをポイ捨てする人や廃棄物を不法投棄する業者が後を絶たない。
プラスチックごみ削減に向けた取り組み
国別の海洋プラスチックごみ排出量を見てみると、中国に次いで東南アジア諸国がトップに名を連ねており、2010年の調査によるとベトナムは世界第4位となっている。
ベトナム政府は1998年以降、プラスチックごみの削減に関する13の策を打ち出している。また、2020年には環境保護法(2014年制定)が改正され、同法ではプラスチックごみおよび廃棄製品の回収・処理、リサイクルに関する要件が明記されている。
さらに同年7月、政府は「2030年に向けた海洋プラスチックごみ管理に関するナショナル・アクションプラン」を公表した。
その一環として、プラスチック製レジ袋および使い捨てプラスチック製品の製造・使用を段階的に禁止する政策を打ち出した。これにより、プラスチック製レジ袋は2026年、使い捨てプラスチック製品は2031年に完全禁止となる。
(※ 2023年12月現在、レジ袋は一部のスーパーを除き無料提供されている。)
このような流れの中で、企業でもプラスチックごみの削減に向けた取り組みが始まっている。
スーパーでは資源ごみの回収を開始し、各メーカーではパッケージをリサイクル可能な素材に変更するなどの企業努力を行っている。
しかしながら、Covid-19の影響もあり、計画の実施状況には遅れが出ているという。
今後、プラスチックに代わる製品の開発・製造や、国民の意識改革に向けた一層の努力が必要である。
(※2023年12月14日付 VTC News電子版 Giảm rác thải nhựa đại dương cần chính sách và hành động quyết liệtを参照)
このような状況の中、竹や植物の葉を活用した「竹筒コーヒー」なるものがVnExpress(2023年12月14日付)で紹介された。
※画像は同記事から転載。
竹筒コーヒー
[ 2023年12月14日付 VnExpress より ]
「竹筒コーヒー」を開発したのは、ホーチミン市4区にあるコーヒースタンドのオーナー、グエン・フインさん(27)。
建築関係の会社に勤めていたが、起業を目指して一ケ月前に退職。ビジネスモデルを模索する中で、竹筒コーヒーを思い付いたという。
竹筒にコーヒーを注ぎ、ネビキグサで作ったストロー、木製スプーン、パンダンリーフの飾りを添えた「竹筒コーヒー」は、容器代(12,000ドン)を含めて1杯26,000ドン~32,000ドン(約1ドル~1.3ドル)で販売している。
販売を開始するや否や、瞬く間に口コミが広がり、間口3メートル、奥行き1メートルの小さなスタンドは連日大盛況。タンブラーが足りず、閉店時間を早めることもあるという。
うちの店ではプラスチック製品を一切使いません。
タンブラーの材料である竹は、タイグエン(北部山岳地帯)から毎週1,000本以上仕入れていますが、それだけでは足りません。
竹は中が空洞になっており、太さもコーヒータンブラーとして使うのにちょうど良い物が手に入りやすい。さらに、竹の香りがコーヒーの風味を一層引き立ててくれる。
しかし、実際にタンブラーとして提供するまでには手間と時間がかかる。研磨し、石鹸を使って3回洗浄し、乾燥させるという工程があるため、フインさんは毎日開店の2時間前から準備を行っているという。
竹筒タンブラーは5回まで衛生的に使用できるので、
次回来店の際は、ぜひお持ち込みください。
竹筒コーヒーは朝・夜の各2時間限定販売だが一日150杯以上の注文がある。
スタンド横のテーブル席で飲むことも出来るが、ほとんどの客がテイクアウトするという。
注文から提供までは4分ほどかかり、ピーク時には10分以上待つこともザラであるが、それに不満を言う人はいない。
コーヒーとパンダンリーフの香りが合わさって、とても良い匂い。
竹筒カップも素敵でお洒落。ただ、店内が狭いのが残念ですね。
SNSで話題になっていたので、片道20km運転して買いに来ました。
コーヒーの味自体は普通ですが、見た目が良いし、
環境にも優しい商品なので、素晴らしいと思います。
プラスチックごみの削減が緊喫の課題であるベトナムにおいて、プラスチックやガラス製品を一切使用しないフインさんの店は、若者を中心に熱い視線を集めている。
最大の課題は、いかにして竹の供給源を確保するかということである。
竹を十分に入荷できるようになったら、支店を出そうと思っています。
読者コメント
1
プラスチック製品は使わないと言いますが、竹林を伐採して竹筒タンブラーを作るんですよね?竹筒タンブラーは使った後どうするんですか?
クリエイティブなのは結構ですが、ベトナムでは竹でコーヒーを淹れる習慣などありません。私は感心しませんね。
>>1
コメントする前に記事をちゃんと読もうよ。竹でコーヒーを淹れるなんて書いてないよ。プラスチック製コップの代わりに竹筒を使ってるの。
>>1
竹は物凄いスピードで成長します。だから、定期的に伐採して資材として活用するのが良いんです。
一部の地域では、竹が成長し過ぎて他の樹木に悪影響を与えています。
>>1
プラスチック製品は分解にとても時間がかかるんです。でも、竹は植物なので自然分解されますから、環境を破壊しません。世の中には竹を利用した製品が沢山ありますよ。
>>1
気難しいオジサンですね。ベトナムには竹林が沢山あり、昔から竹を輸出していますよ。森に入って行って竹を伐採するわけじゃありません。
あと、コーヒーの容器なんて何でもいいんです。ガラスやプラスチックである必要はありません。
10
将来的に竹筒タンブラーがもっと普及すれば、多くの人が竹を栽培するようになるでしょう。もしそうなったら、緑地とお金の両方を手に入れることができますね。
>>10
竹の栽培者はとても貧しいそうです。大変な苦労をして買い取り業者の所まで運搬しても、1本あたり1万ドン程度にしかならないのだとか。
もし、記事のようなコーヒーショップが高値で買い取ってくれるなら、栽培者も少しは生活が楽になるでしょうね。
30
ガラスコップより竹筒タンブラーのほうが環境に優しいっていう根拠が分からないんですけど。
>>30
竹筒タンブラーは再生可能な材料で作られていますが、ガラスコップは再生不可能な鉱物(石英)から作られています。
>>30
ガラスを製造するには、石炭を燃やして砂を溶かさなくてはなりません。その点、竹筒タンブラーは何も燃やさなくても作れるでしょ。
45
>>石鹸を使って3回洗浄し、乾燥させる
とありますが、この方法だと細菌が繁殖しやすいのでは??洗浄後は、熱湯消毒するか乾燥機にかけたほうが良いと思うのですが。
>>45
そうですね。プラスチック製品を使わないのは良いと思いますが、水分をたっぷり含んだ竹は伐採後あっという間に腐ってしまいます。だから、竹筒をタンブラーにするのはちょっとどうかと思います。
70
立派な竹を育てるのにどれほどの時間が必要でしょうか。竹筒でタンブラーを作るなんて、どれだけ竹林があっても足りませんよ。タンブラーは1個12,000ドンだそうですが、このオーナーは環境保護や持続可能な開発について、ちゃんと考えているのでしょうか。
>>70
竹が世界中の樹木の中で最も成長の早い樹種の一つであることをご存知ですか?竹の再生スピードは、一般的な樹木の10倍ぐらいです。ですから、竹林がなくなる心配はありませんよ。
>>70
まるで世界中が竹筒タンブラーを作ることになったかのような言い方ですね。
新しい物好きの間で流行っているだけで、そのうち廃れるんじゃないかな。
90
紙コップと紙ストローのほうが環境保護に繋がると思う。
>>90
紙コップは防水のためにプラスチックでコーティングしてあります。
参考・出典
・ 環境省 「海洋プラスチックごみに関する状況」
・ VTC News 電子版:Giảm rác thải nhựa đại dương cần chính sách và hành động quyết liệt (2023年12月14日付)
・VnExpress: Cà phê ống tre bán gần 200 ly mỗi ngày ở TP HCM(2023年12月14日付)
ベトナム語表現
mài nhẵn
[ 意味 ] 研磨する
[ 品詞 ] 動詞
cỏ bàng
[ 意味 ] ネビキグサ(植物)
管理人のコメント
竹筒コーヒー、私も良いと思います。
日本でも「かっぽ酒」(日本酒や焼酎を竹筒に入れて囲炉裏で燗をつけたもの)や竹筒入りの水羊羹なんかがありますよね。
あと、バンブーファイバーを利用した食器や服もよく見かけますね。竹素材の食器は軽いし、落としても割れる心配がないので、高齢者が子どものいる家庭では特に重宝しそうです。
それにしても、環境保護への意識が高い人とそうでない人の差が激しいですね。コメント欄で「竹の伐採=森林破壊」だと思い込んでいる人の多さにビックリしました。そういう私も詳しいわけではないので、偉そうなことは言えないのですが。
この竹筒コーヒーが環境問題に関心を持つ一つのきっかけになったらいいなと思います。