機能不全家族とは、家族の中に対立や暴力、虐待などが常態化しており、子どもの成長に必要な愛情や安全感が欠けている家庭のことである。機能不全家族の中で育った子どもは心の傷を受け、自分や他人を尊重できなくなり、生き辛さを抱えることがある。
2023年11月3日付Vnexpressの読者投稿欄に、男性(26)から「悪夢のような家族と30年近く住んでいる」という相談が寄せられた。
彼の心の叫びと、それに対する読者のコメントを見てみよう。
記事の概要
[ 相談者 ]
・ホーチミン市在住の男性(26)
・本人、母、妹(24)、異父弟の4人家族。長男。
※ 相談者が3歳の時に、母は父のアルコール依存症が原因で離婚。後に再婚するも、継父は家を出て行った。
・異父弟は素行不良で家庭内DV
相談者は小中学生の頃、継父から毎晩のように暴力をふるわれ、痛みと恐怖と悲しみに耐える日々を過ごしていた。
警察に通報しても何ら解決にならず、誰も助けてくれない――それでも必死に平静を装い、自分の気持ちと辛い記憶に蓋をして生きてきた。
いつか幸せな日が来ると信じていました。
それに、母に一日も早く楽をさせてあげるのが夢だったんです。
母に親孝行できるよう必死に勉強し、安定した仕事に就いた相談者。
継父が家を出て行って以来、一家の大黒柱として家族を養っている。
しかし、現在は異父弟からの家庭内暴力や酷い侮辱に耐える日々。
母は貯金数億ドン(数千ドル)を異父弟から取り上げられても何も言わず、相談者の耐え難い状況を知りつつも知らん顔。
異父弟からどんな侮辱を受け、暴力を振るわれようとも、私は我慢するしかないんです。
そうじゃないと母が苦しむことになりますから。
しかも母は、「家を改修したい」と言い、相談者に合計2億5千万ドン(約1万ドル)を要求。
自分の将来の為に貯めて来たお金を全て出しても足りない額だが、何とか工面した。
家は私の物にはなりませんが、母には安心して幸せな老後を送ってもらいたいんです。
そんな中、異父弟の問題行動が日に日にエスカレート。
相談者のお金を盗み、家の中の物を壊し、さらに相談者を口汚く罵り侮辱した上、暴行を働く。
心の底から異父弟が憎いです。自分が惨めに思えて仕方ありません。
汗水流して働き、こんな異父弟を養っているのかと思うと情けなくなります。
今まで何度か恋愛もしてきたが、家族とのトラウマが原因でうまくいかなかった。
仕事は楽しいものの、最近は家に帰ると以前にも増して疲労感に襲われ、憂鬱になる。
このような状況を相談者は「悪夢のようだ」と言う。
「悪夢」から逃れようと何度も考えたが、そのたびに母の顔が頭をよぎり、思いとどまってきた。
異父弟に苦しめられ、一晩中涙し、目を腫らしながら仕事に行く日々。
一体、いつになったらこの悪夢から覚めるのか――。
この悪夢の中に30年近くいます。
もう、生きていたくないとさえ思います。私はどうしたらいいんでしょうか?
読者コメント欄
1
人生における苦しみの大部分は結局のところ、自分が選択したことの結果です。
親孝行の仕方は色々ありますが、お母さんは苦しんでいるあなたの姿を見て嬉しいとは思っていないはずです。
お母さんに言って、家を出なさい。そして、お母さんにだけ毎月生活費を仕送りしましょう。義父弟については、あなたが面倒を見る義務はありません。
>>1
今の状況で毎月仕送りするのは駄目ですよ。癖になりますから。
一旦まとまったお金をお母さんに渡し、その後、当面は一切援助しない。その上で状況を見ながら今後の関係を決めていくべきです。
勇気を持って、その巣から飛び立ちなさい。あなたのお母さんは、あなたを愛してなどおらず、あなたを操り、搾取しているだけです。
私もかつてあなたと同様に両親に騙され、搾り取られていました。
けれども、私は全てを捨てて家を出ました。「親不孝者」という汚名を着せられましたが、そんなことは構いませんでした。そのお陰で悲惨な運命から逃げることができました。
子どもが親に背を向けるのは辛いものです。でも、そうせざるを得ないときもあります。
間違った「親孝行」というのは、時に「親不孝」より質が悪いのです。
虐待を受けて育った子どもは次の2つのタイプに当てはまる傾向があります。
1. 自分がされたのと同様のことを、今度は他者にするタイプ。攻撃的で荒んだ人格です。(あなたの異父弟はこのタイプ。)
2.気が弱く劣等感の強いタイプ。虐待されることに慣れきっており、毒になる人と自ら望んで関わろうとする。
あなたは、この負のループから抜け出すだけの理性を持っている、数少ない人の一人です。
けれどもお母さんがあなたを泥沼に引きずり込んでいます。
あなたは一家の大黒柱です。その権力を発動させなさい。お母さんには最低限の生活費だけ渡して、あなたはしばらく家を出なさい。それ以外のお金はびた一文渡してはなりません。
それでもお母さんが今のまま変わらないのであれば、残念ですが決別するしかありません。
まずは、あなた自身を救いなさい。
一年間、家を出なさい。この間は家族の誰とも絶対に連絡を取ってはいけませんよ。
その後のお母さんのことは、お母さんの出方次第です。今、これ以上あなたが出来ることは何もありません。
自分を守るため、家を出なさい。今のままではあなたは心を病み、全てを失ってしまいますよ。
あなたのことを愛してます。あなたの心が平穏でありますように。
そんな毒家族は捨てなさい。
この期に及んで、もし「家族を大事にしなさい」などとアドバイスする人がいるとしたら、その人に異父弟を引き取ってもらいなさい。
出典
VnExpress:Gần 30 năm sống trong gia đình ác mộng(2023年11月3日付)
ベトナム語表現
vòng lặp
[ 意味 ] ループ
[ 品詞 ] 名詞
thoát ra khỏi vòng lặp tiêu cực = 負のループから抜け出す
bóc lột
[ 意味 ] 搾取する、食い物にする
[ 品詞 ] 動詞
đua đòi
[ 意味 ]
① 張り合う、競争する
② 他人の持っている物や身に着けている物を見て、自分も負けじと真似したり、それより良い物を手に入れたりしたがる (※該当する日本語は見当たらない)
[ 品詞 ] 動詞
管理人のコメント
ここ数年、やたら「自己肯定感」という言葉を耳にします。
本屋の自己啓発書コーナーを見ると、「自己肯定感を高める方法」といった類の本が沢山並んでいますよね。
自分や他人のことを評する言葉として「自己肯定感が高い・低い」という表現もたびたび耳にします。
そもそも自己肯定感っていったい何でしょうか?
私の考えでは、自己肯定感とは、人生のあらゆる局面で困難にぶつかった際、自分を励まし前に進む原動力となるものだと思います。これがあるのと無いのとでは、生きやすさが大きく変わります。
では、自己肯定感ってどうやったら育つんでしょうか?
これは、子どもの頃に親や周囲の大人から無償の愛情を受ける中で自然と育っていくものだと言われています。
「私は私のままで価値があるんだ」「私はここにいてもいいんだ」という絶対的な自信と安心感がなければ、自己肯定感は芽生えません。どんなに仕事や学業面で努力しても、それが直接的に自己肯定感には繋がるとは言えません。
本来は誰もが幸せになる権利があり、誰もが他者から愛される価値のある人間ですが、自己肯定感がなければそういった当たり前のことを実感するのさえ、とても難しいのです。
今回の相談者の男性は典型的な機能不全家庭で育ちました。
父親から虐待を受けて心がボロボロになりつつも、自分の気持ちに蓋をし、長男として必死に生きてきました。
そんな我が子の気持ちを知りつつ知らんぷりを決め込む母親のことも愛さずにはいられない…。
今まで何とか歯を食いしばって生きてきたものの、ここに来て限界を感じたのでしょう。
「そんな家族なら捨ててしまえ」「自分の幸せの為に生きて」。
そう言うのは簡単です。
でも、この先も恐らく彼が母親や妹弟を完全に見捨てることはないだろうと思います。そう出来るなら、とっくの昔にしているはずですから。
真の意味で「自分の幸せの為に生きる」というのは、自己肯定感がなければ出来ないことです。
思うに、彼が心の傷を癒すには専門家の助けが必要なのではないでしょうか。
ベトナムでどのぐらい専門的な心理治療や行政からのサポートが受けられるのか、そのへんのことについては私は詳しくないので何とも言えませんが、今の彼は自分ではどうしようもないところまで来ているように思えます。
自己肯定感がなければ、自分の想いを他人に真っすぐぶつけることは難しいです。
自分の悲しみに蓋をしなければ生きていけない環境で26年間も生きてきたのなら尚更です。
月並みな言葉しか出てこないのですが、彼が専門家による適切なサポートを受けることができることを願っています。そして、いつか彼の心の傷も悲しみも全て受け入れて心から愛してくれる人が現れることを心から祈ります。