昨今のベトナムの教育現場においても、モンペや体罰、校内暴力、教師の長時間労働・低賃金など、日本と同様の問題が山積みである。
インターネット利用者数が7,700万人(人口の約8割)に達しているベトナム社会では、事あるごとに学校や教師に対する些細な不満や誹謗中傷をSNSで拡散させるモンペが急増しており、教師は日夜対応に追われている。
記事の概要
VnExpress(2023年10月25日付)より
ハナム省の小学校で5年生のクラス担任を務めているフエ教諭(50)は、夜10時に校長から児童宅へ謝罪訪問するよう命じられたという。
事の発端は、休み時間に友達とふざけて遊んでいた男子児童が足を滑らせて机に頭をぶつけたことだった。
当該児童は授業中に「頭が痛くてちょっと疲れた」と訴えたものの、本人も他の児童らも休み時間中の出来事については何も言わなかったため、ただの体調不良だと判断したフエ教諭は保護者に迎えを頼み、早退させた。
しかし夜9時頃、男子児童の保護者から電話が…
うちの子、今日、学校で机に頭をぶつけたそうですね。
大事には至ってないと思いますが、今から病院に連れて行きます。
直後に校長に報告し、翌朝に謝罪訪問に行く心づもりであることを告げたハー教諭に対し校長は、
もし保護者に「先生が謝罪に来るの遅すぎ!」とかネットに書かれたら困るんだよね~。
明日じゃ遅いよ。今すぐ謝罪訪問に行きなさい。
大体、ハー先生がちゃんと見てないからだよ。以後、気を付けるように。
そんなわけでハー教諭は、夜10時に見舞いの品を持参して5km離れた男子児童宅へ謝罪に向かうことになった。
日頃から業務に忙殺され疲れ切っていたところに今回の一件で追い打ちをかけられ、ハー教諭は退職時期を3年早めることにしたという。
教師が生徒・保護者から敬われる時代は終わった。
生徒を叱責しただけで猛烈な批判にさらされた同僚の姿を目の当たりにした、ある小学校の男性教諭は、仕事に対する情熱を失ったと語る。
生徒を大声で指導したり厳しく叱ったりしないように気を付けています。無難に授業だけやってますよ。
私は短気な性格ですから、一瞬の出来事をネットで拡散されて職を失うことになりかねません。間違ってるとは思いますよ。でも、私もサラリーマンですからね…。
読者コメント欄
1
ネットに投稿したい保護者には、させときゃいいのよ。
もし学校側に非がないのであれば、全ての投稿を証拠物件として保存して保護者を名誉棄損で刑事告訴すればいい。
授業時間外に生徒がふざけていて怪我をするのはよくある話で、先生の責任ではないんだから。
>> 1
いやいや、ちょっと落ち着け。
生徒が1,000人いれば保護者は2,000人いるわけで。それだけの人数のSNSでの発言を誰がチェックするんだよ?
>> 1
真偽は不明でも、ネットに悪く書かれたら即、学校の信用やブランドは失墜します。学校が保護者を訴えるのは簡単なことではありません。保護者はせいぜい学校に謝るだけです。
事の真相も分からぬまま学校にまで押しかけ、他の生徒や校長、先生に暴行を働くような保護者は多いですよ。
コメ主だけど。
だからそう書いたじゃん。学校側に非がないなら保護者にビクビクする必要はないってこと。
かつては安月給で苦労していた先生たちが、今は保護者対応に苦心しているんだね。
自分の子どもには教職課程に進んで欲しくないと言っている人が私の周りにもいるよ。
教師を守る体制を作らないと、ベトナムの教育現場もいずれは韓国のような状況になってしまうんじゃない?
このままだと、生徒は益々やりたい放題で手に負えなくなってしまうんじゃないでしょうか?
なぜ今の社会は生徒と保護者を「神様」扱いするんでしょう??何か事が起こるたび、すぐ先生のせいにするでしょ。そんなだから、先生が生徒を十分に指導出来なくなってるんですよ!
これ以上、先生や学校が不当な扱いを受けないよう、明確な規範を立てるです。問題を起こした生徒本人が法に則って処罰を受けるべきであって、先生いじめをするのは完全に間違っています!
教師はそれぞれの個性を持った生徒を何十人と見ているわけで、学習・生活の両面でとても責任の重い仕事です。学校で何か問題があった場合、保護者はまずじっくりと考えてから先生に対応をお願いしましょう。もし学校がネット上で誹謗中傷された場合は、刑事告訴すべきです。ここまでの発展を遂げた現在の我が国において、サイバー犯罪を取り締まらないなんてことは許されませんよ。厳しく取り締まればその分、犯罪は減ります。
出典
VnExpress: Giáo viên e ngại phụ huynh (2023年10月25日付)
ベトナム語表現
cùng lắm
[ 意味 ] せいぜい~、いいところ~
[ 品詞 ] 副詞
* 文頭または文中で ” cùng lắm là ~ “ =「~が関の山だ」の形で使うことが多い。
管理人のコメント
この話、問題は本当に保護者側だけにあるんですかねぇ?
確かに暴徒化した保護者による事件がたびたび世間を騒がせていますけど、今回のフエ先生の話に関しては、どう考えても校長に問題があるでしょう。
頭痛で早退した我が子から夜になって「実は今日、学校でこんなことがあって…」と聞いた保護者の反応は至極当然なものであり、少なくともフエ先生に対してすぐに家に来るように要求などはしていないわけで。
それにしても古今東西いるんですね~、こういう自己保身に走るだけのトップって。外部からちょっと批判されるとオロオロして部下に責任をなすりつけ、自分は逃げ回るだけ。
部下を守ってくれない上司の元で働くことほど辛いものはありませんわ…。
政府主導による教育現場の改革はもちろん必要だと思いますけど、教師一人ひとりが安心してやりがいを感じながら仕事が出来るかどうかは、トップに立つ者(校長)にかかっているんじゃないですかね。